にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「素直じゃない子はこう」
ぴたりと歩みを止めた私たち。
こいつぅ……普通にマフラーを首にかけませんでしたよ、この子は。白と黒のチェックのマフラーは首にではなく、私の顔にひょっとこのようにほっかぶりをさせられている。
「…………」
「あはは、あったかいでしょ。ほっぺと鼻の頭は既に赤いからあとは口だけだね」
やってやろうか! 口曲げてひょっとこ踊り! ……絶対、やるかよ! やんねーよ! まあ、確かにあったかい。それにマンションまであと少し。この辺に知り合いはいないし。私は彼をひと睨みするとそのままほっかぶりをされたまま歩き出した。
「あれ、取らないんだ」
笑いを噛み殺しながら私の後をついてくるにゃんこのミィコ小宮。私たちはそのままマンションに着いてエレベーターに乗り込んだ。
「ツンツンばっかりじゃ、疲れるでしょ。デレっとたまにしてみなよ、由比子」
「大きなお世話って言ったでしょ。親しくもない相手にデレっとできません」
「…………」
あれ……? 言いすぎたか?押し黙る彼が気になってちょっと顔を盗み見るつもりで横をむいたら、バッチリ目が合ってしまった。