にゃんこ男子は鉄壁を崩す



「あれ、由比子。手袋は」

 ミィコは首を傾げるのが癖なようだ。背が高いせいかな。いつも私のことを見るとき、何かを覗き込むとき、必ず首を傾げている。今、ミィコが見ているのは赤くなった私の手。

 少し、寒かった。慌てていたので手袋なんて忘れていたんだ。


「ああ、今日はしてないの」


 私は手をポケットに隠してあっためた。

 だって、ミィコって絶対……


「これ、しなよ」

 ほら、こういうでしょ。意外と気遣いが細やかなのよね。大雑把な私とは大違いだ。特に恋人でもない相手に私はこういうこと言えないし。だから、断るのも当然で。


「え、いいって。小宮さん寒いでしょ」

「女の子がそんなところで遠慮しない。プ……ちょっと大きいね」


 ミィコは半ば強引に私の小さな手に彼の大きな手袋をはめた。ホントだ。黒の毛糸の手袋は指先が余りまくって子供が大人の手袋をしているみたいだった。



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