にゃんこ男子は鉄壁を崩す
「ね、小宮さん」
「ん」
私はずっと気になっていたことを彼に聞いた。いや、あれは絶対に彼が悪いのだけど。だけど怪我をさせてしまったのはやっぱり私だから。
「手、もう大丈夫?」
「ああ、うん。あともう少しって感じかな」
ミィコは手を出して指を見せてくれる。長い指はこの間、私がしてあげた包帯じゃなくて絆創膏に変わっていた。
「あの時はホントにゴメンね? マジで怪しかったから」
「ああ、俺も焦った。絶対、下着ドロに間違われてるって。まさか怪我するとか思わなかったけど」
ククっと笑う彼に私は膝よりも上に積もった雪の中、誰かが歩いた足跡を重ねてズボッズボッと歩きながら、もう一度、謝った。
「だから、ごめんって」
「ホント、どうしてくれんの、商売道具」
また『商売道具』という言葉が引っかかるけど、どんな職業か聞いてみたい衝動に駆られるけど、それもなんとかゴックンしたよ。
だってただのお隣さんだもん。これ以上親しくなることないでしょ。