にゃんこ男子は鉄壁を崩す


 今の私と彼の距離。5cm。


 ガタタン、ガタタン――――


 ホントはギュウギュウな満員電車だけど僅かな隙間をミィコは私との間に作ってくれていた。そのおかげで潰されるの覚悟で乗った満員電車で私は潰されずにすんでいる。

 いや、それにしても近いんだけど。他の乗客から見れば5cmはすごくありがたい距離かもしれない。でも、今の私にとってはすっごい近いよ! 私と向かい合わせになって違う方を向いているけどミィコは私を守ってくれているようなそんな錯覚に陥る。


 だからなんだか恥ずかしくて彼が違う方を見ていようと私は俯いたまま顔を上げれない。だって私、背が高いから、顔を上げてしまったら、ミィコとの顔の距離が近すぎてヤバイ。


 でもさ、私って馬鹿なんだよね、基本的に。抜けてるの、どっか。鉄壁鉄壁と言われるけど肝心なとこに隙ができてる気がするんだ私は。それがなかなか自分ではなかなか修復不可能な、そんな僅かな隙。


「由比子?」



「ん?」


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