ひとりの夜
ピリピリ、ピリピリ…
ベッドの上に寝転がってぼんやりしていても、携帯はすぐに取れる場所に置いてあって。
そんな可能性なんて万に一つもないのに、どこかで期待している自分に呆れて笑ってしまう。
画面を見ると、そこに表示された律儀な親友の顔がうかぶ。
「もしもし」
「…さやか?今年はまた、より一層暗いね」
電話越しに眉をひそめる童顔が容易に想像できる。
「だって別に楽しくないし」
「まぁ、めでたい歳じゃないよね」
「お互いね」
「ふふっ……まぁでも、さやか」
「ん?」
「誕生日おめでとう」
「ん、ありがとう」
そう、今日はクリスマスで、私の誕生日。
あの人と過ごせない、たいしてめでたくもない誕生日。
結婚して二人の子供に振り回されていても、毎年毎年忘れずにこうして電話をしてくれる親友とは、彼氏がいないときには二人でお祝いもした。
今は、こうやって電話でしか繋がれなくなってしまったけれど。
それでも私の誕生日を忘れずに祝ってくれる数少ない大切な人。