追憶の灰
タイトル未編集

【プロローグ】

屋上へ出るドアを開けると、肌を刺すような冷たい風の洗礼を受けた。

丸めた背筋を伸ばす。

太陽が近く感じて、両手を伸ばす。

「…暖かい…」

自分の感情に飲み込まれない様に、小さく息を吐いたその時、
「光!!!」
勢いよくドアが開いた。


天城陽斗は私を見つけると、肩で息をしながら駆け寄って来た。

「探したよ。今、おばさんから話し聞いた…」

「陽斗…。私、何処にも行きたくない!ママもパパも、私だけ日本に残ってもいいって言ってたのに!」

「仕方ないよ。叔母さんが来てくれるのが条件だったんでしょ?入院しちゃったなら、色々大変だろうから…」

「私一人だって平気なのに!」

「おばさんもおじさんも、光が心配なんだよ」

「…陽斗は私と離れても平気なんだ!!?」

「お互い一年ガマンするだけだよ」

陽斗の親寄りの言い方に、無性に腹がたって、何かがハジけた。

「光?」

「来ないで!!」


私は陽斗を見つめながら後ずさる。

背中が金網にぶつかった。
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