追憶の灰
「…陽斗?!」


振り返って見た陽斗は、変わらない笑顔だった。
一年前より背は少し伸びて、体つきも心なしかガッチリして見える。


「陽斗!!」
考えるより早く、私は陽斗に駆け寄っていた。


「…?はい。陽斗は俺ですけど…俺に用ですか?」

「…陽斗…?」

「はい?」


変わらない笑顔、変わらない声、変わらない瞳、なのに、陽斗であって、陽斗じゃないみたいな…鳥肌が立つような違和感。


「今日、帰って来たの…」

「?何処か行ってたんですか?」


「…陽斗?私のこと分かってる?私は陽斗の…」
言いかけたその時

「ハル君!!お帰り~!!」
勢いよく陽斗の玄関のドアが開き、その大きな声は、私の声をかき消した。


「茜、あまり騒ぐなよ」
陽斗は私の事が見えていないかの様に、横を通り過ぎていった。


「ふふっ。ハル君が帰ったのが見えて嬉しくてつい。ごめんなさい」


いっぱいの笑顔で陽斗の家の玄関から出てきたのは、私と陽斗の幼なじみ茜ちゃんだった。


「…えっ?…茜ちゃん?」
どれもこれも訳が分からず、考えも言葉もまとまらない。


「あれ?光ちゃん?!いつ帰って来たの?」
茜ちゃんは陽斗に駆け寄ると、陽斗の服の袖をくいくい引っ張る。


その光景を前に、何処かドクドクと音を立てて痛くなった。


「茜の知り合い?初めまして」

「違うよ~、ハル君!私とハル君の幼なじみの光ちゃんだよ!前に話した事あるでしょ?」

「…あっ!分かった!幼なじみの…」


「も~。ハル君は先に中に入ってて」
茜ちゃんは陽斗の背中を押した。

「茜、急に何だよ」

「光ちゃんと、幼なじみの女の子同士、秘密のお話するの!」

陽斗はため息混じりに「はいはい」と返事をすると、私に軽く会釈して、家に入って行った。
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