追憶の灰
出発の日は、穏やかな冬晴れだった。

空港に見送りに来てくれた友達たちと一頻り話し、この景色を焼き付けようと、ゆっくり辺りを見渡す。

「光、ちょっといい?」

「うん」

陽斗が差し出した手に、自分の手を重ねる。
安心する温かさに、この時間が永遠に続けば…と、何度も願う。

ゆったりした足取りで、皆から少し離れ、視角になる所で陽斗は止まった。


「光、これ…」

「?」

陽斗が近付いて来て、キスされるのかと思って目を閉じた瞬間、何の感覚もしないまま陽斗が一歩下がった気配がした。
窺うように、薄目で見る。

「光、目を開けて。ここ見て」と、陽斗が自分の胸をトントンと指差す。


視線を下に移すと、胸にシルバーの指輪があった。
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