追憶の灰
手の平に指輪を乗せる。

「?」

指輪と思ったモノは、円ではなく、三日月の形をしていた。

「作ったんだ。元は1つの指輪なんだけど、割って…」

陽斗は首にかかった鎖を引っ張り出す。

鎖には、私と同じ三日月の形をしたモノが付いていた。

「こうすれば…」
陽斗が私の手の平から三日月を持ち上げ、自分の三日月と合わせる。

ピタリと合わさった三日月は、1つの円になった。

「光が来年帰って来たとき、また繋げよう。それまで俺の片割れだと思って持っていて。俺もちゃんと付けるから」

「…うん…ありがとう。陽斗」

「本物の指輪はもっと大人になった時渡すから、待ってて」

抱き締められた陽斗の温もりに、止めどなく溢れる嬉しさと涙に、私はただただ何度も頷く事しか出来なかった。
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