追憶の灰
搭乗ゲートには、既に父母と見送りに来てくれた皆が集まっていた。

「逃げたのかと思ったわ」と、苦笑するママに「もう大丈夫」と、笑顔を返す。
少し困った顔で、パパが頭を撫でた。

短い談笑の中、何度も陽斗と視線を重ねる。
と、陽斗が自分の胸をトントン叩く仕草をした。

『俺はいつも一緒に居るよ』
そんな想いが伝わってきて、嬉しくて何度も頷く。

最後に皆ともう一度挨拶を交わして、笑顔で手を振りながら、私は住み慣れた国を後にした。

最後に見た陽斗の笑顔を焼き付けて、胸の三日月をずっとずっと握り締めていた。
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