追憶の灰
誰か他に好きな人が出来たの?

返事が怖くて、打っては消してを何度も繰り返した、結局送れなかったメールを思い出す。


陽斗に逢いたい…
…でも怖い

逢ったら陽斗はどんな目で私を見るのかな…
一年の時間が夢だったみたいに、変わらず笑ってくれるかな…

考えれば考える程、嫌な想いばかりに捕らわれる。


空港を出て、タクシーに乗り込む。
動き出すと、緊張で鼓動は一段と早くなった。


日本に着いてから、一言も喋らない私を心配して、パパとママが何度も明るい笑顔で話し掛けてくれたけど、全部通り抜けていった。


車内で流れる景色を見つめながら、陽斗に貰った三日月を祈る様に手で包んだ。
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