煮込み長靴
そう思うと懐かしさと寂しさも味わいに入ってきて涙が出そうになった。
俺は、もう充分煮えたのを確認すると三人の取り皿に公平に分けた。
「あ!足先の所は皆で分けようよ。」
橋本がそう言って足先の部分を上手く皆に分けた。
「建設業を長くやってると水虫の可能性高いしそこが美味なんだから。」
俺は、自分自身が水虫で無いためか、特にそこが美味だとは思わなかったが、まあ橋本は、自分自身が水虫の為にそこに、こだわるのだろう。
三人とも黙々と噛んでいた。
狭い部屋にクチャクチャと音がいやに響いた。
確かに八十年代物の独特な味わいがした。
希望が有ると信じていた時代の味わいだ。
噛んで飲み込むと喉に引っ掛けそうになり俺は涙ぐみながら何とか飲みくだす。