煮込み長靴

この何とか飲み込むのもヴィンテージ長靴の醍醐味だと言える。


四十代の男三人が涙ぐみながら何とか飲み込むのは、滑稽だがそれはそれで、良い光景でもある。


田中が、急に立ち上がると窓を開けて吐いた。


飲み込み切れなかったのだろう。


まだ甘いなと思う。


「見てよ。飲み込き切れなかったけど、吐いたお陰でこの涙と鼻水が何だが良くない?」


俺は腹の中で言い訳しやがってと、思いながらも、それも味わいかもなと頷いて見せた。


少ないマニアなメンバーを失いたくないし俺も最初のうちは、何度も吐いたから気持ちは分かるのだ。


田中は、吐いた後は苦しみながらも完食した。


三人で完食するとフ~とため息をつきながら満足感に浸った。

「いつかは、東京タワーを作った人の地下足袋を食べたいよ。

あちこち、色々調べてるけど、なかなか手に入らないんだなあ。」


俺達は、長靴だけでなく地下足袋系にも当然興味があった。
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop