愛しの太ももサンタちゃん
「おまえがミニスカサンタをさせられて傷ついていたから。なんとかしてあげようと思って。この店に連れてくるから、カノジョのためだけに料理をしてくれとアイツに頼んだ」
でも。誘えなかった。
と彼が言う。
「去年も。今度こそ誘うと、この店も準備して待っていてくれた。でも、おまえが友達に電話して約束しているのをスタッフルームで聞いてしまってできなかった」
そして今年――。
「だから、今年が三年目。やっとおまえを連れてこられた。バカみたいだろ。三年も。おまえのこと、週に三回も顔を合わせているのに、クリスマスにならないと、俺もふっきれなかったんだ。クリスマスでも迷ってばかりだった」
憧れていた彼がネクタイを緩めながら、照れくさそうに言った。
「よかったら。仕事以外でも癒して欲しいんだけれど。どうかな」
真っ暗闇の窓に、ぼたん雪がひらひらと舞っている。
雪の平原は静か。ルカは涙を流していた。
「私、入社して初めて池上さんをみて――。素敵な大人のお兄さんだなって。ずっとずっと憧れていたのに」
気恥ずかしそうにうつむいてばかりいた彼が、今度は目を丸くしている。
「私だって。池上さんは大人すぎて、仕事の話しか相手にしてくれなくて。子供すぎて、女になんかみてくれていないって。ずっと前に諦めちゃっていたんですけど」
「それ。本当か」
彼も呆然としている。
ルカは涙を拭きながら、こっくりうなずいた。
「うわー。マジかよー。なんだよー。俺、馬鹿だな」
ううん。私もバカ。
即席のカレシで、今年も自分を誤魔化そうとしていた。最悪の方法。
もうちょっとで、本当に欲しかったものを永遠に失うところだったかもしれなかった。