愛しの太ももサンタちゃん
お店で食べる――は、彼のやり方だった。
客と同じようにトレイとトングを持って、商品を眺めて気になったパンを買う。
店の片隅にあるテーブルに腰をかけ、そこでゆっくりと食べながらも、彼の目線は入ってきた客の動向を気にしている。
そして時々、スタッフの動きも。ルカの動きも。ロボットのような表情もない、平坦なまなざしで見ている。気になって時々、レジから横目で彼を見てしまうと、目が合ってびっくりする。
集中してやれよ。そのまま客に愛想良く接客しろよとたしなめられているような気になったルカの背筋も伸びる。
食べ終わった彼がレジ横に立ってルカにささやいた。
「メロンパン、動き悪いな」
メロンパンは、このベーカリーを有名にした代表商品だった。それがなかなか売れていないことに営業の彼が気がついた。
「あの、郊外の本店とここでは買われるお客様のニーズが少し違う気がします」
ルカも子供の頃からここのメロンパンは大好きだった。まだ若かった社長がローカルの情報番組やCMでアピールしていたことは印象深く、この街ではメロンパンと言えばこのパン屋なのに。この駅地下では動きが悪いことは肌で感じていた。