愛しの太ももサンタちゃん

 そんなにスタイルがいい方ではない。
 太っているわけではないけど、細くもないルカは、太もも丸だしでミニスカサンタの衣装を着て店先に出た。

 その時の、男性たちの好奇の視線がどれだけ恥ずかしかったか。

 そのミニスカサンタの時に『女性軽視、下品』というクレームが来たとかで、ミニスカサンタは廃止され、ルカはホッとした。

 それに比べたら、トナカイ着ぐるみなんてずうっとマシ、マシなはず。はずなんだけど――。

 何年やらせるつもりなのだろう。
 そして自分も。何年もカレシがいないクリスマスを、トナカイの着ぐるみで過ごすのだろう。

 今年もトナカイ、じゃない、ピエロみたい。

 着ぐるみを着て、いらっしゃいいらっしゃい、クリスマスの素敵なケーキはここだよおー! と、小躍りをして客を呼んでいる。

「ぬいぐるみで客寄せなんて、時代遅れです」

「我慢しろ。社長命令だ」

 いつもの平坦で冷めた目に睨まれた。
 ルカの隣にいるサンタは、シビアで冷徹なサンタ。

「はい、そうですね」

 このサンタは、恋もプレゼントも持ってこない。




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