愛しの太ももサンタちゃん

 やっぱり今年のイブも仕事で散々。
 だから速まって、知り合いの知り合いの男性を即席カレシにしてしまった。

 一時でもいい。このささくれだったイブの夜を、ひと晩でもいい。一緒にいてくれる人が欲しかっただけ。

 でも、そんな自分は最低だった。
 25日には味が落ちるケーキのように仕立て、相手の彼の存在を踏みにじっていたのかも。
 断ってくれた彼は悪くない。
 最低なのは、私。

 トナカイのぬいぐるみを脱ぎ捨て、ルカはうなだれる。
 いままでにない後味が悪いクリスマス。

 帰って泣こう。

「お疲れ。今年もごくろさん」

 サンタの衣装を脱ぎ、ワイシャツにネクタイを結んでいる池上さんがスタッフルームに戻ってきた。

 その彼が唐突にいった。

「メシ、おごるよ。地下駐車場に車をとめているから、店閉めたら来いよ」
「え」
「待っている」

 ぶっきらぼうに言い残し、彼が出ていった。

 え、なんかいきなり誘われた?
 ど、どうして?
 こんなこと、初めて。

 ヤケになって客寄せトナカイをやっているルカがよほど哀れに見えたらしい。
 でも。ルカの頬がほんのり熱くなる。
 ずうっと前、憧れていた人から、今更だけれど誘われた。
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