ご近所恋愛（笑）

よく意味が分からないが、それで住まわせてもらえるのなら万々歳であろう。私は戸惑いながらも、真っ直ぐに家主さんの綺麗な瞳を見つめた。


「ん、合格」


「え」


「適当に空いている部屋選んで荷物運んどけ。おい、お前ら手伝ってやれよ」


「はぁい」
「ああ」


あまりにも呆気なくてポカン、としている間にも、話は進んでいく。


「え、あの…いいんですか？」


「ああ。お前はいい瞳をしてる。ここには俺が気に入った奴しか住まわせねぇ主義なんだ。気に入らなければすぐ追い出す」


「はぁ」


「家賃は三万。ガス代や水道代も全部含めてだ」


「ええ！？そんな安くていいんですか！？」


「ああ」


完全に私が放心していると、いつの間にかイケメンさんと、お兄さんが私の荷物を持っていてくれていた。


「何してんだー、行くぞ子猫ちゃん」


「あ、はい！」


家主さんにぺこり、と頭を下げて、私は二人に駆け寄っていく。


「そうだ、自己紹介まだだったな。俺は綾川 泉(アヤカワ イズミ)っていうんだ。職業はホスト、よろしくな」


チュッ、と投げキッスと共に自己紹介をしてくれた色気ムンムンのお兄さん。納得の職業だ、ホストならこんな色気ムンムンでも不思議ではない。

先ほどはそれどころではなかったが、見れば見るほどかっこいい人だ。

肩につくかつかないかくらいの、襟足。少しロン毛の紫色の髪の毛、片耳にだけついているピアス。胸元の開いたシャツがさらに色気を倍増させている。

それにしてもキザな男の人だな、と思っていると、イケメンさんがへらりと笑って、手を差し出してきた。


「俺は森山 樹(モリヤマ イツキ)。一応大学生やってまーす。よろしくねー、菫ちゃん？」


「よ、よろしくお願いします！」


「あははー、そんなに堅くならないでよー」


ゆったりとマイペースに喋る森山さん。本当に美形率が高いな、と思う。

垂れ目の目に、泣きぼくろ。ふわふわとした綿あめみたいな白い髪の毛をポンパドールにして、大きな黒縁眼鏡をかけている森山さん。だぼっとした服が、何だかよく似合っている。

これが俗にいう癒し系、というやつだろうか。