ご近所恋愛(笑)
「交流会はここまでにしといて、とりあえず荷物を子猫ちゃんの部屋に運ぶぞ」
「はぁーい」
「あのっ、私自分で持てます!」
「いーのいーの、俺たちに任せとけば。か弱いレディーに重い物を持たせるなんて男の恥だろ?」
「う…、ではよろしくお願いします」
何だかうまく言いくるめられた気がする。きっと、綾川さんは女性の扱いに慣れているんだろう。
「っと、ここが菫ちゃんのお部屋だよー」
私の部屋は二階だった。家主さんから預かったのか、森山さんは鍵を取り出すとドアの鍵を開けて、私を中に案内してくれる。
「わあっ…」
中は、とても綺麗だった。
普段から手入れしているのだろう。古びた感じはない。この建物は外から見ると、かなり古い感じがしたので、少し心配だったのだが、中はそんなことなかった。
「リビング、部屋が一室、和室が一室。トイレキッチン風呂もある。一人暮らしに必要な物は全部揃ってるぜ。どうだ?」
「凄いです!ちょっと感動してます!」
グルグルと部屋を見て回りながら、そういうと何故か綾川さんはプッ、と吹き出した。
「面白い子猫ちゃんだな」
「何か面白いこと言いましたっけ私…?」
「いや、何でもねぇよ」
綾川さんは私の頭をくしゃりと撫でて、にこにこと微笑む。よく分からないが、私は面白い子だと思われたらしい。
第一印象としては、少し残念な気もする。
「菫ちゃーん、この荷物ここでいいかなー?」
「あ、すみませんっ。そこで大丈夫です!」
荷物を運んで貰っていることをすっかり忘れていた。
慌てて森山さんに駆け寄って、荷物を受け取る。何とか二人の手助けもあって、無事自分の手荷物は運べた。
「ありがとうございます、森山さんに綾川さん」
「いーえ、どう致しまして。それより、子猫ちゃん」
「はい?」
「その綾川さんってのやめねぇか。泉でいい」
「あ、俺も~。樹でいいよー」
「…じゃあ、お言葉に甘えて、よろしくお願いします、泉さん、樹さん」
改めての挨拶をこめて、笑顔を向けると二人も優しく笑ってくれた。こんないい人達なら、ここの暮らしも楽しくなりそうだ。
ワクワクしていると、樹さんが部屋をキョロキョロと見渡して首を傾げた。