誘いの季節
「どうした、月夜…」
明良が尋ねると、月夜は熱の籠った目で彼を見詰める。
「兄、様…」
強請るような、甘えるように濡れた声からは、一度意識したらそうとしかわからない、はっきりとした欲情が感じられた。
「…ん」
その妖艶な声音に魅せられるように、じっと月夜の唇を見詰めていた明良は、唐突な口付けに反応出来なかった。
口付けは段々と深くなり、やがて明良のいちばん深いところへ触れた。身を震わせそれを拒否すると、漸く、緩慢な動作で唇が離される。
「…ごめんなさい…」
月夜は伏し目がちに言うと、盆を持ちまだ粥の残る茶碗を片付けようとする。慌てる手を取って、明良はそれを止めさせた。