気になるあの子はまひろちゃん。
ガコン、と鈍い音を立てて落ちて来たミルクティーを取り出す。
左手のてのひらのなかで水滴を帯びているオレンジジュースは、紙パックなのにペットボトルと同じ落ち方をしてくる手抜き自販機のせいで角が少し潰れてしまっている。
祐一が何で潰れてるんだと騒がなきゃいいなと思いながら、お釣りをポケットに突っ込み。
ふと自販機を振り返ると、今のがラスト1個だったらしいミルクティーが売り切れのランプを灯していた。
今日はまだまひろちゃんと目は合っていないけど、少しラッキーだなとオレンジジュースの上に積まれたミルクティーを横目に見た。
と。
「うそっ!
ミルクティー売り切れー⁈」
昨日至近距離で聞いたばかりの柔らかい声が、俺の耳をまたくすぐった。