気になるあの子はまひろちゃん。
まひろちゃんに変に疑われてはまずいと、慌てて熱を冷まそうとぱたぱたと制服を仰いでみる俺に何も気づかず、
まひろちゃんはそうだ! と、ふいにブレザーのポケットに手を突っ込んで。
「これ、お返し!」
ぽん、とオレンジジュースの上に置かれたのは。
「……カイロ?」
「うん。
それならまだ使ってないから」
もうすぐ11月にはいるとはいえカイロなんて早いな、と考えていた俺の頭は、ゆるりと笑うまひろちゃんによって即座にまぁいいか、なんて楽天的なものに崩れる。
「……ありがとう、まひろちゃん」
まひろちゃんの笑顔につられて俺も思わずへらりとだらしなく笑った。