気になるあの子はまひろちゃん。
と。
一瞬まひろちゃんがきょとん、と間の抜けたような顔になって。
……あ。
「ご、ごめん!
気安くまひろちゃん、なんて……!」
「ううん、そうじゃなくて。
あたしの名前、知っててくれたんだって驚いちゃっただけ。
だからね、」
焦ってろれつがうまくまわらない情けない俺に、まひろちゃんはけろりと言い放った。
「まひろちゃん、て、呼んでいーよ」
くるんとミルクティー色の髪を揺らして。
「またね、涼くん」
ふわりとまどろむような優しい笑顔を散りばめて、手を振りながら廊下を小走りで駆けて行った。
__その直後にまだかと鳴った苦情の電話は祐一からだった。