気になるあの子はまひろちゃん。
「今回の数学のテスト難しかったもんねー」
と返しながら、もうほとんど中身のないカフェオレをずずーとすする。
と。
「…な、なに?」
突然、じ、と俺のことを見つめてくるまひろちゃん。
聞いてもなかなか返事は返って来なくて、ただ見つめられるばかりで。
心拍数が急上昇して、どきどきしてしまう。
すごく長く感じたけれど、実際は多分そうでもないほどの時間をじぃ、と凝視されて、やっとまひろちゃんは口を開いた。
「……涼くんさ、数学得意?」
「へ?」
「得意っ?」
ぐ、と迫られて顔の距離がちょっと近くなりすぎてびっくりする。
心臓に悪いから止めて欲しい!
緊張して答えるに答えられないし‼
「と、得意か苦手かだったら、得意かな……?」
「ほんと!?」
俺が曖昧にそう答えると。
まひろちゃんは顔の位置を戻して、ぱあっと今日一番の笑顔になった。
全く話が見えない俺は、なにかに喜ぶまひろちゃんに首を傾げる。
「あのねっ、涼くんにお願いがあるの!」
突如、顔の前でぱん、と両手のてのひらを合わせて来たまひろちゃん。
「あたしに、数学教えてくださいっ!」