気になるあの子はまひろちゃん。



予想だにしていなかった展開に、一瞬反応が遅れた。



「……え?
 数学?教えるの?俺が?まひろちゃんに?」



倒置法使いまくりで、情けないきょとんとした顔で聞き返すと、まひろちゃんはうんうん、と力強く頷いた。



…………。



「え、ええええ!
 まひろちゃん、本気⁈ やめといたほうがいいよ絶対!
 俺なんかが教えたら、解るもんも解らなくなるよ⁈」

「ケンソンなんてしなくていいから!
 数学得意なんでしょっ?
 お願い!教えてください!!」



再度、両のてのひらを合わせるまひろちゃんに、俺はたじろぐ。




祐一にときどき教えたりはしているけれど、その教える相手が好きな子になると大分違う。



緊張しまくりで言葉がちゃんと紡げるかどうかすら危うい。




……だけど。

まひろちゃんが手を合わせてまで頼んで来てくれているんだ、俺に。


嬉しい。力になりたい。



……だけど。




そんなふうにまどろっこしく俺が悩んでいると。



「お願いおねがい!
 涼くんしかいないの、頼める人‼」



なんて。

好きな子に言われたら絶対断れないような、可愛い文句を挟んで来た。


< 24 / 70 >

この作品をシェア

pagetop