気になるあの子はまひろちゃん。
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その日、帰りのHLが終わっても席を立たない俺のところへ、祐一がやけに元気無さげに寄って来た。
「りょ〜〜〜う〜〜〜」
「うわっ。
なに、テンションやけに低いな」
珍しい、と俺が言うと、祐一は突然俺に抱きついて来て。
「助けてくれー!
テストで赤点で今度の再テストで合格しなきゃ俺、留年しちまうよー!」
どこかで聞いたことのある、似たような内容を半泣きでぐずぐずと喚いた。
「とりあえずくっつくな!
男同士で気持ち悪い!」
「ひどい!
ちょっとくらい慰めろよ!」
「あーはいはい。
慰めてやるから今回は自分で頑張れ。
俺は先約が入ってる」
祐一を無理矢理引き剥がしながら、まひろちゃんのことを脳裏に思い返してそう言うと。
祐一はえぇ!?と大袈裟に驚き、そして慌て始めた。
「なにそれ!
俺は!? 俺には教えてくんねーの!?
涼が俺に教えてくれなきゃ誰が教えてくれんの!?」
「先生にでも聞け。
俺の手はもう空いてない」
「うわあぁぁぁーーーん!
うらぎったなー!」
「意味わかんねぇ。
ほら、早く先生に頼んで補習マンツーマンでやってもらえよ」