気になるあの子はまひろちゃん。








その日、帰りのHLが終わっても席を立たない俺のところへ、祐一がやけに元気無さげに寄って来た。



「りょ〜〜〜う〜〜〜」

「うわっ。
 なに、テンションやけに低いな」



珍しい、と俺が言うと、祐一は突然俺に抱きついて来て。



「助けてくれー!
 テストで赤点で今度の再テストで合格しなきゃ俺、留年しちまうよー!」



どこかで聞いたことのある、似たような内容を半泣きでぐずぐずと喚いた。



「とりあえずくっつくな!
 男同士で気持ち悪い!」

「ひどい!
 ちょっとくらい慰めろよ!」

「あーはいはい。
 慰めてやるから今回は自分で頑張れ。
 俺は先約が入ってる」



祐一を無理矢理引き剥がしながら、まひろちゃんのことを脳裏に思い返してそう言うと。


祐一はえぇ!?と大袈裟に驚き、そして慌て始めた。



「なにそれ!
 俺は!? 俺には教えてくんねーの!?
 涼が俺に教えてくれなきゃ誰が教えてくれんの!?」

「先生にでも聞け。
 俺の手はもう空いてない」

「うわあぁぁぁーーーん!
 うらぎったなー!」

「意味わかんねぇ。
 ほら、早く先生に頼んで補習マンツーマンでやってもらえよ」

< 27 / 70 >

この作品をシェア

pagetop