気になるあの子はまひろちゃん。
足を自分で動かそうとしない祐一の背中を押し、教室を出ていこうとする担任を追わせておいだす。
ふぅ、と一息吐いて。
祐一には悪いけど、まひろちゃんと祐一のふたりを同時に見れるほど俺も頭は良くないし。
なんせ、教える相手がまひろちゃんだし。
あーなんか今から緊張して来た。
と。
胸を落ち着かせようとしたとき。
「りょーうーくーん」
もう、聞き慣れた、きれいに響くあの子の声が背中にかかった。
「お待たせ!
えへへ、放課後に会うの初めてだから、なんか不思議な感じするねー」
鞄を肩にかけて、いつものヘッドフォンをはずしたまひろちゃんが俺に駆け寄って来た。
昼休みと、前のようにときどき目が合うくらいだったまひろちゃんとの接点が、またひとつ増えて素直に嬉しくなった。
「教室は、涼くんのクラス借りちゃっていいの?」
「うん。
担任に許可とったし、誰も来ないと思うよ」
祐一も、今頃先生を捕まえて違う教室で補習の最中だろう。