気になるあの子はまひろちゃん。



休憩ついでに自販機に来た俺たちは、いつも通りにじゃんけんを、とはいかず。


あたしおごる!あたしにおごらせて!!
と挙手をしてきたまひろちゃんに、初めておごってもらってしまった。




俺の言葉にむくれながら、そこまで常識なくないよと呟いて、ミルクティーを吸い出すまひろちゃんに思わず笑ってしまった。



「そういうことじゃなくて。
 なんか、嬉しいなって」

「……今度からは、あたしももうちょっとおごるね?」

「確実に分かってくれてない気がする」




1度もじゃんけんに勝てなかった自分が悪いのだけど、渡すことしかなかったジュースは、気持ちの一方通行を形にされて、見せられているようで。



与えるばかりだった気持ちが、少しだけ返ってきてくれたような気がして。



思わず、ほころんでしまったんだ。




どうゆうこと?と聞いて来るまひろちゃんに、



「今はまだ、わからないでおいて」



と、視線を逸らした。


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