気になるあの子はまひろちゃん。
あの子と距離と
窓の外の空が黒をまといはじめたころ。
俺とまひろちゃんは教科書をぱたりと閉じ、補習をお開きにしようとしていた。
「今日は勉強教えてくれてありがとう、涼くん!」
ペンケースを鞄に収めたところで、まひろちゃんが勉強会を締めるように言った。
「いや、全然。
まひろちゃんと勉強するの、楽しかったし」
こちらこそありがとう、とお礼を返す。
「もし良かったら、テスト前とか、また勉強教えてほしいなー、なんて」
「もちろん、俺で良いなら」
「ほんと?やったあ!」
まひろちゃんの弾んだ声に、どきりと期待をしそうになる。
まひろちゃんが時折見せる、思わせぶりな言動たちに自意識過剰だとわかっていながら、小さく望みをもってしまう。
もしかしたらまひろちゃんも俺と同じ想いなんじゃないか、なんて。