気になるあの子はまひろちゃん。
あー、もう!
と、募る苛立ちの勢いに任せ、無理矢理ひっこぬいてやると、自転車はぐらりと簡単にバランスを無くした。
まだ部活だなんだで残っていたらしい数台の自転車を5つほどドミノ倒しで横倒しにしてくれる。
「(うっ、わー…。
今日はほんとに最悪だー…)」
もう嫌だと、無意識で盛大に息を吐き出して、その場でがっくりと肩を落とす。
苛立つよりも落ち込むんだ、アンラッキーが重なると。
自分の自転車のスタンドを立て、すぐ隣で倒れている自転車をまず1台、ゆっくりと起き上がらせる。
情けなくもプリント整理で疲れ切った俺の腕は、たかが5台の自転車を立て直すだけでも億劫に感じてしまうらしく、のろのろとした動作で2台目に手をかける。
と。
かしゃん、と俺じゃない人の手で立たされる、俺が倒した誰かの自転車。