気になるあの子はまひろちゃん。
……え。
え、何これ。不意打ち。しかも連続で。
なんで、俺の名前。
勘違いして自惚れてしまいそうで。
胸の奥が途端に強く熱を帯び出す。
何とも返せずに固まっていると、まひろちゃんはばいばい、と言ってくるりと身を翻し。
満足したように、軽い足取りであっというまに正門へと歩いて行ってしまう。
「あ、あのっなんで名前……!」
追いすがるように、声が尋ねると。
「名札だよ」
くるりと振り返ったかと思えば、今度こそ歩き去って行ってしまった。
その後には、まひろちゃんの髪から香った爽やかなシャンプーの香りだけが余韻を残していて。
ドキドキと、心臓が鳴り止まなかった。
「チャリ通じゃないのに、わざわざ手伝ってくれたんだ……」
気になるあの子、まひろちゃんはとても優しい子。