水曜日のクリスマス


え?


わたしの手じゃない手がその本に触れた。


今更引き戻すことも、隣の本を取ることすらできなかった。


思わず隣を見上げると、あっという顔をした男の人がいた。



「あ、もしかして、これ……」


わたしが選んだ本を抜き取った人がわたしを見た。



「どうぞ」


そう、本を差し出してきて、更に困惑してしまう。



「あ、でも、先に取ったのはあなたなので……」


「大丈夫。オレは何度も読んでるんだ」


だからどうぞ。


そう言われて、受け取らないわけにはいかず、受け取る。


「すみません……ありがとうございます」









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