俺は二面紳士

凛が好きだ。

誰かにわかってもらおうとは思わない。

俺には今、唇を重ねる凛だけでいい。

凛が見ている面向きの俺ではなく、本当の俺を見てほしい。
凛の好きになった男は紳士で誠実だけではない、男としてある本来の俺を思ってほしいから。

キスが離れた時、俺は七三の髪を崩し、シャツのボタンを外す。

きっと 怪しめな雰囲気が漂う、暗い店内での視界に馴れた凛の目に俺が写る。

「 髪… 崩すと雰囲気変わるね… 男っぽい感じかな?」

俺がそう見えるのか、髪に触れて、頬に触れてくる凛の手は優しい。

凛… 優しい手を俺で壊したいよ…

そう思ったら嫌うか?

「 私、七三じゃない紳士くんも魅力的だと思う」

「 凛… こっちが俺だよ、いつものは営業だから、それでも… 俺を、紳士には見えない俺を好きになってくれる?」

「 もちろん、優しい誠実だけじゃつまらないもん。私はちゃんと紳士くんが好きだよ? 」

男には、誰でも優しい顔と、夜の男としての顔があるんだ。

見た目だけで俺を造り上げ思われていたなら、俺は凛を抱きしめない。

一瞬でも、本来の俺を見せる事を躊躇した自分が恥ずかしい。

凛は狼な部分もある俺を受け入れてくれるだろう。
だから、俺は、凛にだけ特別甘い狼になってやる。

「 凛、おいで… 」





______完______




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