夏月一会
第一章

夏の序章

凪に初めて会ったのは、大学四年の八月。
学生時代最後の夏休みだった。





「大槻麗海(オオツキレミ)さん。父から話は聞いてるよ。暫くの間、よろしく」

出迎えられた玄関先で、凪は淡々と言った。


「あ…よろしく」

凪の対応に少し戸惑いながら、私は挨拶を返した。


「父には僕の世話をしてくれって頼まれたんだろうけど、別に何もしてくれなくても構わないから。好きにしてて」


「え?」


「部屋もどこ使っても構わないから」

それだけ言って、凪はさっさと家の中に入っていってしまった。


私もとりあえず、凪について中に入った。



凪は、私の五歳年下で、私の従弟にあたる。

でも、会ったのはこれが初めてだった。



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