夏月一会
「後悔しない……?」
凪は最後に聞いた。
「もう、してるよ……」
私達が出逢ってしまったこと。
凪を愛してしまったこと。
凪を、求めてしまったこと……
全てに後悔してる。
でも、もう止まらない。
「そっか…」
凪は小さく呟いた。
そして、私の耳元に唇を寄せた。
「麗海さん…愛してる」
道理とか、倫理とか、そんなこと関係なかった。
ただ、今この瞬間に、凪以上に私を愛してくれている人はいない。
今この瞬間に、私以上に凪を愛している人はいない。
それを肌で感じたい。
それだけで、十分だった。
「麗海さん……」
凪は、何度も私の名前を呼んだ。
「凪……」
私も、何度もそれに答え、凪の名前を呼んだ。
凪は、色々な表情を見せた。
まるで獣のように荒々しく私に触れたかと思えば、急に泣き出してしまいそうな子供みたいに私にすがってくる。
溶けてしまいそうなほど熱く抱き締めてきたかと思えば、急に現実に戻ったかのように冷静に私を見下ろした。
それは、きっと、凪の不安定な心だった。
私は、初めて凪の心を覗いてしまったような気がした。
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