夏月一会
「凪は……何でこの家に来たの?まるで、一人になるみたいに……」
私は凪の顔を見上げた。
「…うん。そうだよ僕は一人になるためにここに来たんだ」
凪は私を見返しながら言った。
「未練を、残したくなかったから……僕が一人の方が、僕にも父にもいいと思ったんだ」
「……どういうこと?」
「父にとっては、僕は要らない存在だったんだろうから……血も繋がってないし、この身体のせいもあって、父に何もできないから……」
「何もできなくなんてないよ…!
私は凪の言葉を遮って言った。
「凪は、たくさん考えて、それで伯父様がつけてくれた『凪』っていう名前の通りになろうとしてたんでしょ…?それのどこが何もできないって言えるの……?」
「麗海さんの前では、そうやって装っていただけだよ……。本当は、本物の凪より遥かに遠くて、荒れてる……。今だって……」
「違うよ……」
私は凪の頬に触れた。
「凪は、凪だよ……。私は、凪といて、落ち着いて……すごく、優しい気持ちになれたの。凪は、海みたいな人だった」
下手くそな表現しかできなかった。
でも、それが私の本当の気持ちだった。
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