夏月一会


「麗海さん……」

私を呼んだ凪の声が、とても震えていた。

目が潤んで、涙が流れて、私の手を濡らした。


「ごめん…麗海さん……」


凪は私を強く抱き締めた。

凪の胸に顔を押し付けられるようになって、凪の表情が見えなくなった。

いや、きっと見えていても、見えないようにしていただろう……



凪が、泣いていたから……


嗚咽を堪えようとしながら、堪えきれずに、凪は泣いた。


私は、何も言わずに、凪の、細いけれど広い背中を撫でていた。


.
< 104 / 121 >

この作品をシェア

pagetop