夏月一会
「ごめん……麗海さん」
嗚咽が治まってきた頃、凪が小さく呟いた。
私を抱き締めている力も、緩んでいく。
「大丈夫だよ……凪」
私は首を横に振って言った。
「麗海さんに会えて……本当に良かった。僕は、麗海さんに出会えて、本当に幸せだよ」
凪はそう言って、再び私の身体を強く抱き締めた。
「だから……麗海さんも、幸せになって……僕よりも、世界中の誰よりも……約束だよ」
凪のその言葉に、私は涙を堪えるのに必死になってしまった。
「うん…約束……」
声が震えないように注意しながら、私は頷いた。
窓の外には、夜明けの気配がしていた。
この夜が明けたら、私はもう、凪のこの腕の中にいることはないだろう。
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