夏月一会
葬儀も全て終わって、一段落ついた頃、私の前に柳さんがやってきた。

そして、私に鍵を渡した。


見覚えのある、あの家の鍵だった。



「凪さんが、自分が居なくなったら、あなたにそこへ行くように伝えてくれ、と……」


「凪が、私に……?」


「はい。凪さんが使ってらした部屋に行って欲しいそうです」



どういうことなのか、よく分からなかった。

凪は何で私をそこへ行かせたいのだろう。



でも私は、何かを期待するかのような気持ちだった。






十月一日。
私の二十二歳の誕生日だ。

どうしてか分からないけど、私はわざわざ自分の誕生日に行こうと決め、足を運んだ。

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