夏月一会
でも、凪は少食だと言って、食に対しては無関心なように思っていたけど、実際そうでもなかった。

毎食、呼べば必ず下りてきてちゃんと食事をするし、それも米一粒残さずにきちんと食べる。


今まで食生活が適当だったのは、単に面倒臭がっていただけらしい。





「これ、美味しい」

凪が肉じゃがに箸をすすめながら言った。


「麗海さんて、料理上手だよね。麗海さんが作るご飯、全部美味しいからいくらでも食べれるよ」



凪は私が作るおかずを褒めてくれることが多かった。

それは突拍子もなく、こっちが照れ臭くなってしまうような言い方で、ドキッとしてしまう。



お世辞だろうと思ったけど、そうじゃなかった。

それは、凪が話す時の真っ直ぐな姿勢で、微笑むような表情で、優しい声で分かった。



凪に褒めてもらうのが嬉しくて、私は毎回料理の腕を振るうようになっていた。



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