夏月一会
相変わらず、静かなところだった。あれからまだ一月しか経っていないのだから、当たり前なのかもしれないけど……


初めてこの家に来たときは、家中がひどい有様だったけど、今日はそうでもなかった。

暫くほったらかしにされていた割には、あの時のまま、変わってなかった。



私は、柳さんに言われた通り、凪の部屋に行った。


ここも、変わらない。

元々凪の部屋には私物という私物はない。
机やベッドなどはそのままの状態でおいてあって、あの日と変わっていなかった。


凪と過ごした、あの日のまま……


それは懐かしくも思えたけど、嫌だった。あの日の気持ちまでが、逆流してきそうだ。


何だか息苦しく感じて、私は窓を開けた。

少し肌寒いくらいの風が吹いてくる。

その空気を吸い込んで、息を吐いた。


そうすると心が落ち着いてきて、私は部屋を見回した。


この部屋に、何があるんだろう……


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