夏月一会

私は、一冊一冊取り出して、赤のスケッチブックを探した。

そして、棚の一番端に、それを見つけた。


一体、凪はこれに何を描いていたのだろう……


紐は、しっかりと蝶結びされていた。

私は、それをゆっくりと解いて、表紙を開いた。



初めのページには、いつものバルコニーからの景色が描かれていた。


その絵の隅に、小さく文字が書いてあった。



『麗海さんと僕が好きな場所』



そうだ。ここは、私が好きだった場所……
私と凪が近づくきっかけになった場所だ。


私はその絵を暫く見つめ、ページを捲った。


そのページを見て、私は目を見張った。


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