夏月一会

私だった。

次のページも、その次のページも……そこに描かれていたのは、私の絵だった。


笑ってる私、キッチンに立っている私、食事をしている私、バルコニーで洗濯物を干している私、景色を眺めている私、海で風に吹かれている私……

全部、凪といた時の私だ。
凪の目に映っていた私…だ。



「いつの間に……」

思わず私は呟いた。


私の知らないうちに描かれていて、それで凪は見せてくれなかったんだ……



私は最後のページを捲る。

そこには、絵ではなく、文字が書かれていた。


私宛の、凪からの言葉だった。


< 113 / 121 >

この作品をシェア

pagetop