夏月一会
麗海さん
これを書いてる今の僕は、もうすぐ来る自分の死を感じ始めてる。
だから、麗海さんがこれを見てるってことは、僕がもうこの世に居ないってことだね。
麗海さんの絵、よく描けてるでしょ。
自分でも思うんだ。僕の一番の自信作だよ。
麗海さんに描いてるところを見られるのは、少し照れくさかったから、だから内緒にしてたんだ。
描いてる時間は、すごく楽しかったよ。
言ったよね。絵を自分の手で描いてると、直に触れてるように感じるって。
だから麗海さんのことを描こうと思ったんだ。
麗海さんに、触れたいと思ったから。
でも、描いているうちに、我慢できなくなった。
実際に近くにいて、手を伸ばせば触れられるところに麗海さんがいたから…自分じゃ抑えられなくなってた。
だから、麗海さんと過ごした最後の夜は、僕が生きていた中で、一番幸せだったよ。
麗海さんに会えて本当によかった。
麗海さんは、僕の生きがいだった。
僕はきっと麗海さんに会うために生まれて、生きてきたんだ。
ただ一つ、麗海さんが好きだって言った秋を、麗海さんが生まれた日を、麗海さんと過ごすことができなかったのが残念だったな。
でもこういう風に、未練ができたっておもうことで、僕が今までちゃんと生きてきたんだってことを、感じたよ。
全部麗海さんのおかげだよ。
麗海さんのおかげで、僕は報われた。
本当にありがとう。
麗海さん
あの夜の約束は、絶対に果たしてね。
僕は、麗海さんの幸せだけを祈ってるから。
さよなら
凪