夏月一会
あれから三度目の夏。
私はもうすぐ結婚する。
相手は、同じ会社の友達の繋がりで知り合って、付き合い始めた、三つ年上の人。
二週間後が結婚式で、同時に入籍する。
今は、新居に引越しのために、荷物をまとめているところだ。
クローゼットを開けて、荷物の整理を始めた時、携帯が鳴った。
着信を見てみると、彼からだった。
「もしもし」
「俺だけど……今何してた?」
「引越しの荷物、まとめてたところ」
「そっか。今、近くに来てるから寄っていっていいか?」
「うん。…あ、でも部屋散らかってるよ?」
「今更そんなの気にする間柄なんてないだろ?」
彼は電話の向うで笑いながら言った。
「そうだね」
私もつられて笑った。
「じゃあ、行くから」
「うん。待ってるね」
そう言って私は電話を切った。
近くまで来てるなんて、そんな偶然を装った言い方は、きっと嘘だ。
私には両親がいなくて一人だから、彼はよく私のアパートにやってくる。
一人でいて、寂しい思いをさせないようにとしてくれているんだと思う。
彼は、優しくて、暖かくて、頼りがいがあって……そして、私のことを愛してくれている人だ。
私も、同じくらいに彼のことを愛してる。
結婚する人があの人でよかったと、心から思える人だ。