夏月一会
「あれ?麗海さん?」
声がして、はっと我に返った。
凪が窓から中に入って来た。
「どうしたの?」
「あ…たまには布団干したらどうかと思って、それで……」
「そっか。じゃあ頼もうかな」
「うん……」
勝手に部屋に入ってしまったことを何か言われるかと思ったら、凪は特に何も気にしてないようだ。
「ねえ、凪君…」
私は手にしていたスケッチブックを見せた。
「これ、凪君が描いたの?」
凪はスケッチブックと私を交互に見て、
「あ、見たんだ。そうだよ。僕が描いたんだ。」
何てこともないというように凪は答えた。
「すごい…凪君。絵、上手いんだね」
私は、物凄く感動していて、その感情のまま感想を言った。
「上手いってほどのものじゃないよ。所詮、素人が描いたものだし」
「そんなことない!凪君、絵の才能あるよ!私は、絵心あるわけじゃないけど…でも凄いっていうのは分かるもん。ねぇ、これってどこの景色?」
私が畳み掛けるようにして話してきいたら、凪はクスッと笑った。
「よく喋るね、麗海さん」
「あ……」
私は思わず赤くなった。
つい夢中になってしまった。
「こっちだよ」
そう言って凪はバルコニー出て行った。
私もそれについて、バルコニーに出た。
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