夏月一会
バルコニーは思ったより広くて、ここにテーブルを置いて食事をしたりとか、色々できるような造りだった。


そこに凪は、イーゼルを置いて、スケッチブックを立て掛けて置いているだけだった。



「ここで描いてたんだ…」


「そう。…ほら」

凪は外を指差した。



「わあ……!」

私は無意識に声をもらしていた。



スケッチブックと同じものが、それよりも大きく、いきいきとした景色として広がっていた。


もともと自然に囲まれた土地で環境はよかったけど、ここから見えるものは、私の予想をはるかに超えいた。


東京にいると当たり前のように見える高層ビルやマンションとか、目障りなものは何一つなかった。


ただ、青々とした草木の茂った原が広がり、遠くには山が聳えている。


都会で生まれ育った私にとっては、それが自然そのものの形のように思えた。



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