夏月一会
「何で?」


「年下の従弟と誤解されるようなことなんて何もないから」

また私は即答する。



「残念だなぁ……」


「なーに言ってんの。若造が」


「それ言うと年寄りくさいよ?」


「そりゃあ、あなたよりは年寄りですもの」


凪は、人のことをからかって楽しもうとするところがあった。

そうされると悔しいから、私は凪に応戦する。


「手強いなぁ。麗海さんは」

クスクスと笑いながら、凪は言った。


「五歳も年下の奴に負けてたまるもんですか」


「ふーん?でも、気をつけた方がいいよ?」

何か含みのある笑顔を浮かべて、凪は言った。


「何を?」

首を傾げた私に対し、凪は頬杖をついて、じっと私の顔を見る。


「いくら従弟で、五歳年下だっていっても、僕は男なんだからね?」




思わずドキッとしてしまった。


「ご忠告、どうもありがとう」

私は、顔に出さないようにして、それだけ言った。



凪の表情は、時々、純粋な少年から、艶のある男性のように変わる時がある。

それはっぱり、年齢的にも子供から大人へ、男の子から男性へと変わる時期だからなのか……


私は、凪の二つの顔のギャップに不意をつかれて、不覚にもどきっとしてしまう。
それが悔しくてしょうがない。



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