夏月一会
「きたなっ……!」

家の中を見て、私は思わず声に出してしまった。

でも、それぐらいひどい有り様だった。


家中の家具や床は埃をかぶって、元の色が分からないほどの灰色になっていた。


窓もカーテンも閉めてあってよく見えないけど、どこかに蜘蛛の巣でも張ってるんじゃないか……

というか、虫が湧いて出るんじゃないかと思ってゾッとした。



外観は豪壮な邸宅なのに、中に入ると、長い間ほったらかしにされた廃墟のようだった。


「ああ……暫く家政婦さんが居なかったから、全然掃除とかしてなかったんだ。気になるなら、勝手に掃除して」

凪はそう言って、自室に籠もってしまった。




正直、凪の第一印象は、傍若無人な奴、だった。

自分も勝手にするから、どうぞご勝手に。

そんな態度が常だった。


それにしても、この部屋の状態は気にならないのか。

私は、自他共に認める几帳面の綺麗好きだから、人一倍気になるのかもしれない。


でも、この状態はひどすぎる。

私じゃなくても、普通の神経をしている人間なら引いてしまうだろう。



これは一体、どうすればいいのだろうか。


そもそも、何の因果でこうなったのか、分からなかった。



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