夏月一会


『次のニュースです。今日、国会で衆議院議員の松本慶一氏が、予算案の発表を――』


つけたままにしていたテレビのニュース番組から、その名前が出てきて、私も凪も反応した。


松本慶一……
私の伯父で、凪の父親だ。


伯父は少々世間に名の通っている人だから、こういう場面はよく目にした。



ぼんやりと見ていたら、凪が手元にあったリモコンでチャンネルを変えた。



『――今日はですね、今が旬の夏野菜を使ったスープを作りたいと思います』


凪が変えたのは、料理番組で、司会者とアシスタントの女性が、明るい声を出していた。


「美味しそうだな、これ。麗海さん、作ってよ」

凪はいつものように笑顔で言った。


「え……あぁ、うん。いいよ」

私は一瞬うろたえて、すぐに平静を装ってテレビでいうレシピをメモし始めた。


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